かきごおりのお庭。

企画の小説とか書いていきます.

『自慰』

「……」 こんな感情、要らなかったはずなのに。 薄暗い部屋で一人、行き場の見当たらない熱を慰めている。眠りたかったのに、不本意に昂ってしまった、自らのモノを扱いて押さえつけようとしている。こんなことは久しくて、上手くできない。ただ無心で、こい…

月故想

その紅瞳の先には、彼女の寝顔があった。 何の危機感もなく、無防備な姿で眠る彼女。綺麗に生え揃う長い睫毛に、張りの有りつつも柔そうな頬。視線を少し下に落とせば、少し赤みのある良い肌色をしたすらりとした首。少し牙を伸ばせば、簡単に裂けて、照りの…

悠久の音色

彼女からお礼にと受け取った、小ぢんまりした木製のピアノ。届いてすぐには、弾かなかった。しばらく、何もない机に置いて、放っておいた。またしばらくして、何となく倉庫に押し込んだ。それを繰り返して、理由もなく、持ち歩くようになった。 どうして弾か…

小さな船出

『はやめの 卒業ブローチです』 そう言って、シャツに通された黄色い花の胸飾り。手作りと言われた、少し不格好なそれを彼は「フクジュソウ」と呼んだ。 ――――俺はお前に、何かしたか。 何もしてないはずなんだ。だのに、わざわざ俺を追って、贈り物をくれて…

以て瞑すべし。

【本文は世界滅亡アンソロジー『くたばれ世界』に投げ捨てられた文章です】 さて、何をもって滅びとしようか。 ありがちなのはやはり分かりやすい"破壊"だろうか。 要因は無数にあれど、齎される結果は概ね一つ。意思も理由もない破壊。 長い年月を経て建築…

絶黒に堕ちて。

親を喪い、同時に神に選ばれたその日。夢を見た。 灰と火の粉が空気を染めて、空を覆うのはおどろおどろしい戦慄の朱色。燃え盛る黒い炎に囲まれた十字架の下に、少年と少女が立っていた。親を亡くしたその日の、アメジストにも勝る程の母親の美しき紫眼をも…

白恋に散る

波の音を聞いている。波の音しか、聞きたくなくて。今は一人で、一人になりたくて。 人気がない所をわざわざ探した。歩いて歩いて、空と海しか見えない場所に辿り着いた。 適当な防波堤に腰を下ろして、ぼうっと、起こったことを振り返っていた。夜色に染る…

色に出ず。

修学旅行に行く前のいつか。 帰りの時に、君を待ってた。 僕は夕暮れを光源にして本を読んでいて、座っていた階段が硬くって。首が疲れ出した頃に君はようやくやってきて、僕を驚かして。 しばらく見てたような口振りで笑う君に、また驚いて、少しムッとして…

Speech is Silver,

子供の集まる中、怒号が飛び交っている。 槍玉に上がるのは、無崎という名前。大人しくて、無我で無口で無害な彼女。 なんてのは唯の猫被りだった様で。彼女は確かに、鎌倉ねむを屋上から突き飛ばした。僕は目に焼き付けた。その腕の力の入れ様も、覗き込む…

The Boundary of Mirror

砕かれるような金属音。嫌な感触のあった足底を身体を竦めながら見てみれば、硝子の鱗粉がこびりついていた。金のフレームはひん曲がり、可笑しな曲線美を描く。 別にわざとでは無かったけれど、一度壊してしまったなら仕方が無い。もっと壊してみようか。靴…

カバーガラス

初めて訪れる雑貨店。ドアを開いて、迎えるのは聞いたことのないアイドルソング。宇宙を模した壁紙が四方に敷かれた、閉め切ったうす暗い店内が少し蒸し暑い。 CDが見たいと、自分を連れてきた大豆生田は多趣味の様で、クラスメイトにも顔が利く。転入して…

【R18】暗澹

※ifです。 「なに、なん、でこんな、やだ、いや……!」 先生は出張でいなくて、自主練で。友達の子は先に帰ってしまって。せっかく静かだったから、部活の時間が終わったあとも、しばらく残って練習をしていて。いい加減にもう帰ろうと、着替えをしに物陰へ行…

青色に目が眩む

どこまでも広がる透けるような青空と、陽に照らされ白く波打つ蒼海の間の地平線。 確か、4年くらい前。自分が育ったこの場所を離れるまで、毎日のように見ていた景色。離れる前は、別にどうって事ないなんて思っていた。離れてから少し経てば、一目見たくて…

後始末。

「……馬鹿な事を。」 目の前の醜悪な怪物に、毒を吐く。 うぞうぞと不愉快な動きを繰り返す、異形の肉塊。存在そのものが気象悪いと感じるほど、それは非現実的なもので。 そこに重ねて苛立つのは、その怪物に目の前で部下が囚われたからで。しかもあろうこと…

【CW】影を落とした先の事。

ヒイラギの輪結成からほんの少し、時は経って。 お互いがお互いの距離感をまだ測りかねている頃。ギクシャクとしたやり取りが連鎖する。 …まだ、あの人たちについて分かっていることは少ないけれど。少なくとも彼らが凄腕なのは間違いない。纏っているオーラ…

星の降る夜。

冷たい空気が肌に刺さる頃。真夜中の、ブリテンのどこか。 「星って、キレーなんだな。」 手を繋いで、後ろを忙しなく着いてくる少女。夜空を見て、足を止めて感想を漏らした。 「ああ……そうだな。星は綺麗だ。何時もそこで輝いている。少し憎らしいくらいだ…

祈りを込めて。

「ふぁ………。」 大英博物館地下。数々の研究成果や過程の詰まった書類。それらが納められた棚に囲まれて、あくびをひとつ。 いくら呪いを解くためと言っても、参考文献がこんなとこで見つかるのか不安になってきている自分がいる訳で。財団に来たのは失敗だっ…

【R18/BL】脈打って。

「はぁッ、はっ、ん、ふ、ふっ、ふふ……あっ…、」 乱暴に揺さぶられる身体。淫靡なため息とともに上擦った声が漏れる。自分に覆い被さって、快楽に溺れる彼を見て、不思議と笑みが浮かぶ。始まる前こそ勃たないなどと渋っていたのに。いざ始まってみればこれ…

真夜中の授業。

日付の変わりそうな時刻。大英博物館地下。BC財団研究施設。 普段人の多い休憩室……もとい度々お茶会のたまり場と化す食堂も、この時間となっては廊下の方で足音が一時間に数回、ポツポツとするだけ。 そんな中で好みの飲料を片手に、読書に耽ける夜行性の吸…

朝が来なければいいのに。

永遠に、夜でいい。夜が終われば朝が始まる。朝が始まれば、時間は進んで。あらゆる事が、進み出す。 万物は時の流れに逆らえない。生まれ、存在し、やがて瓦解し消え行く。そこに例外はない。余程神秘の、理の外に置かれた存在でもない限り。 ……そして愛す…

Ashley's Day.

薄くらい、仄かな明かりの照らすバーカウンター。 目に眩しいライトブルーが、陳列されたボトルを色鮮やかに照らす。 ジャズ調の激し過ぎないBGM。 ……なんともまあ、暇な野郎も居たものだ。 待ちかねた休日に、そんなお気に入りのバーで一人悠々と立ち飲みを…

継ぎ接ぎの首輪。

つまらない。全てクソッタレだ。今という時間がただ退屈だ。問い掛けと称した拷問も。暇潰しに付き合わされるチェスも。凡て、平坦で。くだらない。 箱と呼ぶに相応しい無機質を敷き詰めたようなその正方形の部屋で、その暗がりの中で、何かを待っている。腐…

【R18】快と辱、えも言われず。

【R18描写があります。】 早く終われ。早く終われ。早く終われ。はやく、はやく、はやく。 未知の感覚に襲われて、身体を震わせて。自分の上に跨った女狐を睨みつけながら、されるがままの自分を悔いて、屈辱を味わう。 窓から入る雨音で、必死に気を紛らわ…

月の忌まわしき夜の事。

天照神国。 西京都、荒川区。取り留めのない日の夜。 月が、一段と強く光を放っているような。そんな気が、した。 ……気のせい、か? 人気のない通り。民家の屋根の、綺麗に重ねられた瓦の道を、誰にも見つからない様に音を消して駆けながら、横目でちらりと…

チェリーブロッサムを飲み干して。

…アラーム。なんの変わりもない、鳴り響くベルの音。いつもなら、特に思う所もなく目覚まし時計を乱暴に叩いてはものぐさに起き上がるのだが。今はなんとなく、それすら面倒に思える。 …これは現実。鬱陶しく感じていた朝の目覚めの感覚が、今は少し愛おしい…

夢夢

ここは、夢の舞台。 スロットから垂れ流され、その輝きの眩しい金貨の滝には誰もが涎を垂らし。何段も積み上げられた透明なグラスのタワーから沸き起こり、泡を立てる黄金色の液体は誰もを潤し。雑踏の中、秀麗な衣装に身を包む端整な者達は鮮やかに、そして…

甘露な夢に、溶けて。【微性的表現あり】

【注意⚠ 後半に微性的表現が有ります。】 船の揺れで、目が覚める。身体を起こすなり、汗を吸い取った服が肌にへばりつく感触が襲う。空調の効いていない部屋だったのか。 …そも、ここは何処だ。寝かせられていた、お世辞にも質が良いとは言えないベッドを手…

現を抜かす、船の上。

気付けば、船の中に居た。それもボートやヨットなどの陳腐なものでない、目が眩むほど輝かしい光景の他所に人の欲が醜いほど色濃く顕れるには最適な様な、そんな豪華客船。 黄金の装飾が施されたシャンデリアが宙高く吊られ、周囲を照らす。周りを見渡せば気…

【R18】気に入った獲物は

【BL、性的描写あり。ご注意を。】 取り留めのない話を繰り返す。 歯応えのない日々を彷徨う。 ひたすらに欲に身を任せ始めたのは、いつからだったか。幼い頃に抱いた夢は何だっただろうか。思いを馳せた人は誰だっただろうか。何を頭に刻み付け体に染み込ま…

血の中で一緒。

【ifルートとなります。】 あれから、三ヶ月の時が経って。未だに僕は、振り出しの地点から動く事が出来なくて。むしろ僕から歩を後ろ向きに進んでしまったような、そんな気分で。 …何をしていいか、わからない。今度こそ、どん詰まり。欲しい欲しいと思うだ…