かきごおりのお庭。

企画の小説とか書いていきます.

どうか、お幸せに。

「はろ~~~~~ロイ君。順調に出来上がってきてるみたいだね。…大丈夫?いろいろはだけてるんだけど。」

「…ん。ズリエルか。あーーーーはだけてる??…これか。まあいいだろ……。気にすんなよ。」

「気にするのは君じゃなくて他の子だよ。大体お風呂上りなんだから風邪ひくかもだし。…こーんなに顔赤くして…。あんまり強くなかっただろ。何してるのさ…。」

天照のお酒は癖の強いものや度数の高いものも多い。大方そこら辺に当たったんだろう。

「ていうかロイ君がそんなに飲むってことは…。なんか考えてたんだろう?どうしたの。多少君より年取ってるだけのおじさんに言ってごらんなさいよ。」

「んん。…………笑うなよ。…ロミー。ロミーのことなんだ。………俺には、もったいないくらいの人でさ。魔法学校に通ってる頃から、同年代なんだけど、正直憧れだったんだよ。それこそ、手の届かないくらい。仲良くはさせてもらってたけど、なんか、な。幸せ、幸せなのは確かなんだよ。でも、こんなにあっさりと…。これで、いいのか、みたいなさ…。」

彼の魔法学校時代のお話は家でもあんまり聞いたことがなくて。恥ずかしいのかどうかは知らないが。無理に聞くことでもないと思ってたし。彼が話すタイミングを待っていようとは思っていたが、まさか今とは。

「…君の魔法学校でのこと、あんまり僕は知らないけど。うーん難しいね。僕もそこら辺のアレは疎いんだけどさ…。まあ、言えることは色々あるっちゃあるんだけど…。その、なんだ。余り言いたくないな。なんせ僕にも刺さるからね。長い付き合いで、交際に至ったってのは………。ていうかそれより、君らの道を歩いてほしいなとか、思っちゃったりね。」

「…なんだよそれ。どこ視線だよ。大体俺だってお前の若い頃知らねえよ。言わねえもん。」

「ああ、言わないよ。自分の話するのも好きだけどそれより人の話を聞くのが好きだからね。…ていうか。あ~~~~~んな素敵な人とくっついといてそりゃ~~~~ぜいたくな悩みなんじゃないの~~~~~~????遊園地の時超浮かれてたの僕見たし~~~~~??」

わざと、ふざけたように。

「んなっ…ばか!やめろそんな…声大きいぞ!」

元々赤かった顔が、さらに染め上がった。愛いねえ、全く。

「…でも、本当に素敵なやつなんだよなあ…。気は配れるし、一緒にいて楽しいし。そうそう、この前なんてな、ロミーがさ…」

照れていたと思ったら急に惚気始めた。いいさいいさ。いくらでも聞いてやろう。幸い夜は長いから。

なんて思ってたのも束の間。僕より君にふさわしい相手が現れたみたいだよ。

「…ロイ。そこまで相手のことを思ってやれるなら、十分さ。心配することなんて何もない。まあ、だからといって調子に乗ってたら痛い目見るけどね。君なら大丈夫だよ。うん。…じゃあ、僕はそろそろ行こうかな。僕より君に似合う人が来たしね。」

「…あん?そうか…ありがとな。お前より俺に似合う人?一体…」

そうして僕らの起こした視線の先は。

「…ん?なんだい?あたしに何か用?」

通りすがってたロミーさん。ほら。君に似合ってるだろ。目ぇまんまるになってるけど。大丈夫?

「ああ。そうだよ。僕はちょっとトイレに行きたいんだけど、ロイ君が行くなってうるさくて。ロミーさんさえ良ければ僕の代わりになっててくれない?」

「あらそう。頼まれたら断るわけにはいかないね。なんだよロイ~甘えんぼ姿勢か?」

「おっおっおいズリエル!ばかかおまえ!!おまえな!!おまえ!!」

行こうとする僕を引き留めて小声で言うロイ。まったくもう。

「君が気にするべきなのは僕じゃなくて彼女だろ。お幸せに。そんじゃあね~~~。」

前半の部分だけ耳打ちして。じゃあねの所だけ背を向けて、手を振って言う。ちょっと余計なことしちゃったかも。…まあ良かったと信じるしかないか。うんにゃ。…どうか、お幸せに。同居人ながら慎ましく、見守ることにするよ。口は、できるだけ出さないけど。…できるだけね。もしかしたら僕の家を出ていく日も近いかな?

 

 

…ちょっと、寂しくなるな。

 

なんて、柄にもない事を思った。

 

 

塩水ソル子さんのロイ・エンフィールド君、びーさんのロミー・ブレイスマンさんをお借りしました。

ありがとうございました。