かきごおりのお庭。

企画の小説とか書いていきます.

それから、それから。

【帰って、それから。】の続きとなります。

 

 

気づけば夜。家のダイニングテーブルで夕食を食べ終えて。

「ご馳走様でした。」

「お粗末さまでした。」

「思ってたより結構美味しかった。」

「思ってたよりって何だよ。…天照の料理美味しかったからね。エリちゃんと一緒に色々勉強したの。」

「エリ………ああ、エリファレットの事。仲良かったもんね〜。…そう、ずっと言いたかったんだけど婚約って何?聞いてなかったんだけど。」

「アッ…いやだって言う必要ないかなって………待ってごめん足蹴らないで。いたいいたい。」

「はあ〜?何それ俺の事はどうでもよかったんだ?ふーん?」

「そんな事言ってない………そろそろ足蹴るのやめて、ほんといたい…。勢い込めすぎじゃない…?」

「べっつに〜。………そら。」

「アッ!!!!!………おま、え………そこは………ばか……………。」

「気持ち軽めに蹴っといたから多分大丈夫でしょ。今日の分とおあいこ。それじゃお風呂借りるね〜。」

「は…………おまえほんと…………。」

着替えどうすんのお前。言い終わる前にぱたぱたと行ってしまった。下着とか買ってなかったろ今日………。どうすんだ…………。洗い物しよ………。

 

 

そして、案の定。バスルームから呼ばれて行って。手の水を払いながらゆっくり行くと、ドアの隙間からロゼが顔だけ出していた。

「………服持ってきて………?」

「僕のしかないけどいいの?サイズ多分大きいけど?」

「えっ………。」

「他にないよ。なんであると思ったんだよ。僕の家だよ。言っとくけどパジャマみたいやつないよ。」

「………てきとうで、いいです………。」

「はい。待ってて。」

…えーと。肌着にパンツに…Yシャツでいいか。ズボン…は…。…よくわからんぶかぶかのやつでいいか。えっこれ猫プリントされてたの。いつ買ったんだこんなの。まあいいか。

「ロゼ?持ってきたよ。ここに置いとくから。」

「あっはい………。着るから向こう行って……。」

「あ、はい。」

別に男だから関係なくない?言わないけどさ。見たいとかじゃないから別にいいんだけど。本当。コーヒーでも淹れて待ってようか。スプーンから出るけど。

 

うん。やっぱり美味しい。今日も調子いいなあ。ロゼも何か飲むかな。マグカップ用意しておいてやろうかな。ううん、あいつの好きそうな柄のやつあったかな。今日買ってた気もするけど、どうだったかな…。なんかあいつ遅いけど、大丈夫かな。かなかなかな。カップを取りに行こうとしてテーブルを立ち、キッチンに取りに行こうとした所で、戻ってきたロゼと出くわす。

「…あ、ロゼ、なんか飲、む…………?ぁ………………。」

「ん、いや、いいや…。…どうしたの。何急に顔背けて。」

「………いや。……………なんでも、ない…………。こっち見るな…………………。」

なんで僕は何も考えずシャツを渡したのか。あまりの衝撃に思わず壁に手をつく。数十分前の自分を責めたい。いややっぱり褒めたい。なんだその。こう。ロゼが僕の服を着てるところを実際に見て、意識してしまうと。そりゃあもう。…………はあ。言語化できない考えが頭を巡る。………ばかじゃないの………。

「………ズリエル?大丈夫?」

「大丈夫、だから………………ちょっとまって………………。」

近くに来ないで…………いい匂いがする…………やっぱり来て欲しい……。なんだこれ………拷問………?本当にまた死ぬんじゃないのかその内。うあぁ………………。なんだよもう…………。

「……………あー。やっと落ち着いた…………。」

「……何。どうしたの。なんか顔赤くない?」

「うるさい。もう全部お前のせいだ。もう寝る。おやすみ!」

「えっ?えっなんで!ちょっとぉ!!」

強引に居間を後にして、僕の部屋へ向かった。こんな顔見せられるか。馬鹿。……あいつ何処で寝るのかな。ちょっと悪いことしたかも。ごめんね。

 

 

「………俺だって恥ずかしかったんだよ、わかれよ、馬鹿…。」

再び顔を赤くした彼から出る独り言は、虚しくも空を切る。

 

なんとも、上手くいかない二人。まるで運命が、彼らを引き離そうとするように。されど、その運命を押しのけてでも彼らは進む。我らが道を歩まんとする。手を取り合い、足を結び、向き合いながら、漸く進み始められた所だから。どんな障害が立ち塞がろうと、彼らは少しずつだろうと、足踏みであろうと、それに意味があるのなら、止めることは無い。

彼らの往く無数の道に幸あらんことを。残された少ない時間の許す限り、愛し合え。

 

 

 

 

 

もちろんつづきますよ!!!!!!!!!!!!!!