かきごおりのお庭。

企画の小説とか書いていきます.

西京 創作小説

切れかけの糸

…ああ。どうやらまだ、俺は満足できていないようで。 入り組んだ路地の、狭く人目につかないどこか。壁に凭れ、空を見上げ、定まらぬ焦点で流れる雲を追う。自らに問うた、単純な質問の答え。身体から腕をつたい包帯に滲み、それでも先から滴り落ちていく自…

消えられない。

確かに、死んだはずなんだ。失意のままに、あの部屋に呑まれて。遺していく君のことを憂いながら、柄にもなく涙を流して。それでも何とかどうにか、弱みは見せないまま逝けたと思ったのに。 どうして? 意味を問う疑問ばかりが頭に浮かんでは蒸発していく。…

面は暴かれずとも。

大貌博物館地下、財団研究施設。午前の仕事を丁度終え、昼休みに入ったところ。 ああ…疲れた…。最近立て続けにマクガフィンの調査が行われていて…その調査内容、過程と結果…はあ。次から次に仕事が増えていくものなあ。ようやく書類の束を消したと思ったらそ…

緋色に染まれ。

トメニア第三帝国。アーベルト=デンメルング収容所。普段鋼鉄が張り付いたようなイメージで沈黙を保つそこは、最早別の舞台と化していた。 サイレンがけたたましく唸る。血生臭い雰囲気が体に纏わりつく。現実に生きている実感が湧く。数多の獣共の咆哮は共…

首輪の亀裂

某日、トメニア第三帝国内、某所。 雨の降る日だった。湿り気に満ち、ゴミの散乱した薄暗い細い路地の中、一人の男が顔の見えないよう深めに傘を差す。後頭部からだらりと垂らした白髪を弄り暇を潰していた。雨粒が地面とぶつかる音が何重も重なる中に、ヒー…

【R18】夜が耽るまで。

【ガッツリ性描写あり。BL、ふたなり描写あり。閲覧の際にはご注意ください。】 【未来ifです。ある日の夜のこと。の続きとなります。】 ベッドの横に立つスタンドライトの紐を人差し指と中指で引っ掛けて下ろしながら、ベッドの背掛けに体をもたれかけて枕…

ある日の夜のこと。

【未来ifです。】 最近、ロゼがやけに素っ気ない。いつもツーンとしているというか。…僕、なんかしたか?思い当たる節が………なくはない、けど………………ええ?いやどれもこれもそんな大したことじゃないしそもそもあんな事やそんな事でこんなに不満を垂れ流し続け…

もう一度、あの夢を。

【パラレル成分が多めです。読んでいただける際にはご注意を。】 貌国、某所、ナイトリー家…だったはずの場所。その地に、彼女の幼馴染だった二人は来ていた。 確かに見覚えのある家。見覚えのある部屋。今はただの、抜け殻でしかない。 「…埃だらけだな…。…

やがて来る日。

【※未来ifです】 遠い、遠い未来のこと。 体を動かす事が辛く感じる。関節の節々は痛み、咳込みの頻度は明らかに増えた。何も考えられず、ぼーっとしている時間も増えた。僕が出来なくなったことは、今では彼がやってくれているが。嬉しさと同時に、申し訳な…

それから、眠って。

【それから、それから。】の続きとなります。 「…おはよ。」 「はい、おそよう。もうお昼だよ。よく寝たね。」 昼の、1時。丁度だ。大時計台の鐘が鳴る音が聴こえる。 「ご飯は?食べるなら用意するけど。」 「んん………いらない…。あったかい飲み物欲しい…。…

それから、それから。

【帰って、それから。】の続きとなります。 気づけば夜。家のダイニングテーブルで夕食を食べ終えて。 「ご馳走様でした。」 「お粗末さまでした。」 「思ってたより結構美味しかった。」 「思ってたよりって何だよ。…天照の料理美味しかったからね。エリち…

帰って、それから。

記憶が戻った、あとの事。未来if。 「………ズリエルの家って、こんな殺風景だっけ?」 「ああ…。エドマンド君とか、出てっちゃったからね。彼らの私物は彼らが持ってって、それでこの有様。意外と僕のものって少ないんだなって思ったよ。」 本棚の余ったスペー…

この日が訪れることを祈って。

【時系列は来天前です。】 ある夏の日。僕とロゼは夏季休暇をとって、ロゼの屋敷のある土地に帰っていた。魔法の国、ハイランドの北部。山脈が並び聳え立つ、誰も来ないような田舎。周りに立つ山脈や空の青さと、一面の畑や点々と生える木の緑の対比が凄く綺…

永久に続け。

3ヵ月。………実に3ヵ月。長く、それでいて短かった。 …そのあっという間の3ヵ月でさえ。彼の記憶を戻すことは叶わない。…戻る訳、ないけどね。僕がきっかけで起きた記憶障害を。僕がきっかけにならなければどうやって治すのか。あれば是非とも聞きたいとこ…

また、いつか。

タワーの崩れた後。まだ、やりたいことはあって。あの、例のクソお喋り野郎。…なんて、もう言えないな。あんなもの見せられてしまっては。僕はあんたの事、どうもまだ何も知らなかったらしい。まさか飲みたいものを聞いてミロが返ってくるとか、そういう事で…

たった一つの繋がり。

倒れ行く西京タワー。いくら巻き添えとはいえ、色とりどりに輝く魔法や確実に殺意を込めた体術を受けて、ましてやそれも財団の本気を受けて、耐えられるものなんかこの世に存在しないだろう。僕自身は後方にいて、飛んでくる瓦礫から支援勢を守ったり、隙あ…

遺されぬ本心。

映像は、まだ続いている。 男が去ったあと、画面はただその風景だけを写していた。時間だけが過ぎていき、刻々とその色を変えていく景色。そして、青と緑を写していた画面は、気づけば夜を映し出していた。 …そして、聴こえてくる足音。 「…………まだ、見てた…

遺した物。残された者。

ひとつの、ビデオレター。映像記憶魔法が用いられたあまり使われることない珍しい品。 カバーには何も書かれていない。最近撮られたもののようで、まだどこか新品らしさがある。 再生、してみた。 「…………撮り始めてる、ね。」 そうして現れたのは、長い金髪…

儚く、それでも確かに愛を。

【後半にBL性交描写アリ。十分注意の上閲覧してください。】 「ん~~~~………クリスマスの日に入る温泉も…なかなかいいなあ……。」 月の輝く夜に広いお風呂を独り占め…とまでは言わないが。それでも本当に広い。お風呂でゆったりなんてできると思ってなかった…

どうか、お幸せに。

「はろ~~~~~ロイ君。順調に出来上がってきてるみたいだね。…大丈夫?いろいろはだけてるんだけど。」 「…ん。ズリエルか。あーーーーはだけてる??…これか。まあいいだろ……。気にすんなよ。」 「気にするのは君じゃなくて他の子だよ。大体お風呂上りな…

わるいことなにもしてない。信じてくれ。

「…。暇…。」 甘めのココアを飲みながら。今日は甘いものの気分だったから。あと調子も良かったからたまにはと思って。まあ暇なのは仕事サボってるからなんだけど………。うん、まあ良くないし見られたら怒られるor呆れられるのは確定なんだけど。無性にやる気…

二人の間。

………なんかわかんないけど、イライラする。 少し日の過ぎた朝。 普段は滅多に起こらない苛立ちを隠しながら、ホテルの廊下を歩幅を広く取り足早に歩き、フロントに向かう。何故無性に腹が立つのか。その原因すら分からず、また煩わしさが募っていく。 フロン…

稀代の天才魔術師?

天照神国にて、ディレイカウンターをつけて港区の調査中。 「うーん……。反応あるにはあるんだけどな…。なんか代わり映えしないな…。」 外れだったかな。海から輸入とか案外あると思ってたんだけどなー。それともあれか。空から?…だめだ。考え始めると止まら…

真面目に観光、綺麗な彼と。

「んんんんん…もう朝かい…。」 伸びをしながらベッドから身体を起こす。僕の部屋は日当たりが良くて、太陽の日差しで毎回起きる。つってもロンドンは蒸気であんまり日が射さない…因みに僕は目覚ましで起きる派なんだけど。なんかカーテンの立て付け?という…

約束の行方。

エリちゃんと再会して、数日が経つ。この数日間、彼のことが気になって全く仕事が捗らなかった。もうどうしようもないので、周りの子、ちょうど同年代でインヴァレリーに通っているエルザちゃんや歳の近かったデヴィット君に聞いてみたら、アルバムを見せて…

【R18・BL】古馴染みと、二人で。(後半に性交描写あり。)

【後半に男性同士の性交描写あり。途中で攻め受け交代します。地雷の方は閲覧をお控えください。ご注意を。】 血を吸われてから数日経った火曜日。ロゼとの約束の日。夜に備えてちゃんと場所はとっていたけど、ティータイム中に連絡があった。仕事が終わった…

お茶仲間と。 in 天照。

BC財団は、天照に来てもMr.Dの意向でティータイムを設けている。場所はBC財団がとってくれたホテルのロビーだったかな。他にも各々でやってるとこもあるみたいだけど。まあ、なんにせよティータイムがあるってことは素晴らしい。一息つける時間が設けられる…

吸われて。舐めて。 (微性的表現アリ。注意。)

夜の10時くらい。こんな時間にロンドンの裏路地をぶらつくのには理由があって。古馴染みの子に野暮用で呼ばれた。月に何回か呼ばれるけど、何で今回はこんな所に呼ぶのか。家の同居者二人には``友達と飲みに行ってくる``なんて言い訳をした。まあ。間違って…

そんな美形の少年が。

エリファレット・マンスフィールド・モーガン。彼との思い出を、よく思い出していた。 その仰々しい名前に違わぬ、美しい容姿。まだ第二次性徴が訪れていないのにも関わらず、彼の行動や言動の節々からにじみ出ていたその独特の雰囲気とカリスマ。僕は縁あっ…

何の変哲もない朝。

am06:03。日光がカーテンの隙間から漏れ出す時間。 同居者を起こさぬよう静かにベッドからもぞりと起きて、ドアをくぐってリビングへ。だらしなく伸びた前髪をまとめるためのヘアピンをつけて、目をこすりながら顔を洗う。 「なんか…あったっけ…?」 パンが…