かきごおりのお庭。

企画の小説とか書いていきます.

稀代の天才魔術師?

天照神国にて、ディレイカウンターをつけて港区の調査中。

「うーん……。反応あるにはあるんだけどな…。なんか代わり映えしないな…。」

外れだったかな。海から輸入とか案外あると思ってたんだけどなー。それともあれか。空から?…だめだ。考え始めると止まらなくなる問題だこれは。…まあいいかな。ちゃんと仕事はしてるし。少なくともこれで問題のエリア候補は一個つぶれたわけだ。

 

そんな感じで、公園の周りを歩いて帰ろうなんて思っていたら。

…え?…あの特徴的な髪形……まさかな。あの物好きがこんなとこ…来る…わけ…あった。どう見てもそれはあの男で。僕の魔法の始点の一つだった、あの男。

 

 

…彼曰く、「原初の魔術師、大魔術師マグパイ」だそうな。今でも到底、信じられないけど。

 

 

………僕が、孤児院を出てロンドンに来て、1年くらい経った時だったかな。当時の僕が、丁度イングランドにおいての身分の大事さを思い知らされていた頃。なんていうか孤児院育ちっていうかどうもそういう所の出身はあんまり歓迎されないみたいで。まあちょっとイライラしてた頃。白本の勉強もとてもじゃないが捗らなかったし。

そんな訳で当時の僕はいつもどこかやさぐれていて、ちょっと現実にイラついてたんだ。そんな時に、ちょっと怖いもの見たさで、夜の路地裏に入ったんだったかな。そしたら。

「…やあ、そこの青年。ちょっとこの俺の話を聞いていかないか?」

「…はあ?誰だよあんた。」

電話ボックスの中からいきなり話しかけてくる、変なやつ。この瞬間はそうにしか思えなかったな。光の反射で顔もよく見えなかったし。

「おいおいおいおい。俺のこと知らないの?人生の半分損してるぜ。ていうか俺のこと知らないとかあり得ないだろ?さてはモグリだなお前。」

そう言って電話ボックスの中から出てくる、よく喋る奴。

「…え?…あんた…嘘だろ…?」

「お。顔見ればわかるのか。そうそうそういう反応が欲しかったんだよな。そう。俺こそが現代で最も有名な魔術師。別名原初の魔術師。21世紀の大魔術師、マグパイさ。つってもこんな所でのんびりしてるだけのただの天才魔術師なんだけど。」

「…いや、やっぱり嘘でしょ。マグパイはもう死んだはずだし。ブリテンのそこら中にマグパイの墓があるはず。大体どれだけ昔の話だよ。マグパイが生きてるわけがない。」

「…目に映るものだけを信じちゃ損するぜ、青年。君の世界は案外ちっぽけだ。もっと、広く目を持った方が良い。例えば広く目を持ったおかげで魔術を君みたいな子でも使えるようにした俺みたいにね。ま、肝心な教育の部分は丸投げしてた気がするけど。」

「…君みたいな子?僕のことか。…学校に行ってないんだぞ。何がお前に分かるんだ。」

「あれ、行ってないの?インヴァレリーにも他のとこにも??おっかしいな義務教育だったはずなんだけどな~~~。あの婆さん共何やってんだ。全く。けしからん。…ていうか君。白本しか持ってないのか。そ~~~んなおかた~~~い本ばっか読んでると頭までかた~~くなっちゃうぜ。お詫びの印とでも言おうか。こんなのあげちゃう。そらよ。」

「うお、あぶなっ…。なんだ…これ…。」

投げ渡された本の表紙についた埃を掃う。

「ブラック…マギア…?」

「それも知らないのかよ。通称黒本。それも俺が書いたんだよ。おふざけ多いぜ。面白いぜ~~~。その本の中身はだな…。」

 

そうして、色んな事を話してもらった。最初、こいつ自身に興味すら持てなかったが、話を聞く度、関心は増していった。マグパイのした事、周りの出来事、どんな奴がいたか、ブリテンの歴史とか。僕が人の話を聞くことが好きだったからか、どんどん、話に引き込まれていった。時折混ぜるユーモアや嘘が、また僕のツボに入って。

…ある時からめっきり姿を見せなくなったけど。まあもともと神出鬼没だったしな、とか適当に考えて、僕も捜そうとはしなかった。恐らくまたどっかで暇つぶしに誰かひっかけてたんだろう、なんて思ったりしてね。自分から話す分には構わなそうだったけど、隠したいんだろうなってところはほんとに隠すようにしてたみたいだし。最後にした話はなんだったっけ。髪の毛がなんで一部緑とかだったかな。よく覚えてない。

…正直な所、こいつのおかげで僕の魔法の才能は開花したと僕は思ってる。得意な魔法が水魔法ってわかったのも、好きな飲み物を出せるなんて変な魔法を出せるようになったのも、結果的にはこいつのくれた黒本のお陰だったし。…冴えなかった頃の僕に、魔法の面白みを気付かせてくれたのはあんただ。なんだかんだ、感謝してるんだよ。

 

 

…なんて、ちょっと思い出に浸りすぎたかな。あいつは………また消えてるよ。ちょっと目離したらすぐ消える。なんともあんたらしい。天照だから魔法は使えなくて、あんたはただの一般人のはずなのにな。……ちょっといいもん見れた。さーーーてもうちょい港区歩きますか。もしかしたら見落としてた反応があるかもしれないし。

 

またどっかで会おう。あんたに話したいこともたくさんある。また会うその日までよろしく、「大魔術師マグパイ」。

 

 

リードキャラクター(?)の謎の観光客M氏ことマグパイさんをお借りしました。

ありがとうございました。