かきごおりのお庭。

企画の小説とか書いていきます.

儚く、それでも確かに愛を。

【後半にBL性交描写アリ。十分注意の上閲覧してください。】

 

 

 

 

「ん~~~~………クリスマスの日に入る温泉も…なかなかいいなあ……。」

月の輝く夜に広いお風呂を独り占め…とまでは言わないが。それでも本当に広い。お風呂でゆったりなんてできると思ってなかったな。広いお風呂っていいな。風呂が好きとか言っていたアイツの気持ちが今ならなんとなくわかる。

因みにそのアイツたっての希望で人の少ない夜に一緒に入ることに。それは別に構わないんだけど何か様子が気になった。なんか…なんか他に隠してる気がした。まあ僕も隠してることあるし、あんまり気にしないことにした。うん。…喜んでくれるといいけどなあ。…あ。

 

「……随分長かったね?」

「ズリエルより気使うことがいっぱいあるんだよ。」

「何その言い方…引っかかるなあ…。…さっさと入れば。寒いでしょ外は。温泉暖かいよ。」

「……そうする。…んん………きもちいいなあ……天照のお風呂ってなんか違う気がする………はあ~~~~…。」

「そこは分かる。…何か髪の括り方綺麗じゃない。今度教えて。」

「ん?いいよ~。何なら今…と思ったけどお湯に髪の毛つけちゃうね。部屋でやろ部屋で。」

「え。今日はいいや…。今度でいいって本当。」

「もう今日でいいじゃん。久々にズリエルの髪いじりたいし。ね。」

「うええ…いい思い出ないんだけど…?」

そんな、他愛もない話を続けて15分くらいした後。露天風呂の閉まる時間が来てしまったのでしぶしぶ上がった。もうちょっとくらい空を見ながら話したかったんだけど。…しょうがないか。

 

そして部屋へ。準特別室?らしい。速攻で鏡の前に座らされる。

「まじで…ほんとにいじるの…?」

「もちろん。さーーーてどんな髪形にしようかなー。」

「…えっ楽しむ気満々じゃない…?僕括り方聞きたかっただけなんだけど…?」

「細かいこと気にしなーい。」

…ほんとに楽しそうだなこいつ。…楽しいならいいか……。そうして髪だけいじれるバービー人形みたいになった僕はされるがまま。お団子にされたり編み編みされたり。一緒の髪型にされたりもした。まあ当然似合わない。なんで笑ってんだお前。おい。

 

「もう良くない………?結構遊ばれたよね?いろんな髪型できるのは分かったから…。」

「んー。まだちょっと………まいいや。じゃあ括り方だけ最後にちょちょいって教えるわ。」

「ああ教えてはくれるのね……。」

 

…予想よりも丁寧に教えてくれるロゼを見て、なんとも、幸せだなあなんて思ってしまう。ちょっと前はこんな事すら小っ恥ずかしくて、拒否してたんだろうな。…ちょっとは変われたってことかな。変われてたら、いいな。

「…ねえ。なんでずっとこっち見てんの。手動かしてよ。」

「…あ。ごめん。えっとなんだっけ?こう?」

「うん。そういう感じ。…話は聞いてるのか。」

「…よし。できた。…じゃあ解いて終わり!」

いそいそと椅子から立ち上がって抜け出す。温泉入ったのにこんなことしてたら疲れるよ…。

 

さて、抜け出せた所でプレゼントの準備でもそろそろしようかな。渡すのは桜のかんざし。結構悩んだんだよなあ。Mr.Dとかエルザちゃんとかいろんな人に聞いた。決め手になったのはマグパイの言葉だったけど。癪に障らんでもないがまあ貴重な意見だったしうん…。桜のかんざしってだけでも色々種類があってビックリした。本当に天照は綺麗な物が多くて、何回か目移りしそうになった。ピアスとかこっちのがいいんじゃないかなみたいなね。実際マグカップ買っちゃったし。…喜んでくれるかな?ちょっと、不安だなあ………そもそも受け取ってくれるのか。…なんか、ロゼ泣いちゃいそうで…。泣き虫の本質は変わってないものなあ。なだめ方とか考えてないぞ……。

…あれ?ロゼは?…どこ行った?まだ化粧室?

「………ロゼ?え、どこ?」

布団や窓横の独立した小さいものを除いて照明が急に落ちる。えっやばいなんだこれ。ロゼか。またロゼなのか。

「ロゼ?これロゼなの?…どこー?」

「…………ここ、だよ。」

そう言って薄明かりに照らされて静かに現れるのは、帯をぐるぐるに体に巻き付けて、リボンを大きく作ったロゼ。何してんの。

「…俺がクリスマスプレゼントですよーー……みたいな……そんな……ね…?」

自分で言いながらどんどん顔が赤くなって目が泳いでいく。自分でやっといて恥ずかしくなるの?ていうか先を越された。いやそういう次元じゃない。

「えっ…あっ…おお…うん…んん……………ご、ごめんもっかいいって…?」

「えっ…。」

「あっ待って今のなし。えーっとね。あの…待って。色々と…整理できない…。」

自分の髪をくしゃくしゃと照れ隠し気味にかき回して目をロゼから離す。僕も顔赤くなってそうだ。おろおろするロゼ。今にも逃げ出しそうだ。

「………ふぅ。あっおい待て逃げようとするな。そんな姿で行かせられるわけないだろ。」

変身して逃げようとするロゼを引き止める。なんとか止まってくれた。セーフ。

「………あのね。もう正直に、言うね。………めちゃくちゃ、嬉しい。幸せです。もう………さ。本当に言ってるんだよね?ここまでしといて冗談とか許されないからね?」

「…ん。冗談なわけ、ないじゃん。わかってよ。」

「こんな事してくるとは流石にわかんないでしょ。………はあ。そういう所が好きだよ、ありがとう。」

もう半笑いだよ。顔もさっきよりずっと赤くなってるだろうな。もう。ロゼも顔赤くしてさ。何してんだよ僕ら。

「………さーて、と。まあクリスマスプレゼント貰ったからにはさ〜、開けてさ、実際に貰わないといけないよね〜。」

そう言って、腕が巻かれて使えないロゼを強引に抱き上げる。強引ったってお姫様抱っこだし、まだ丁寧なほうだよね。

「えっちょっ…嘘、今からするの…?」

「まさかこうなること予測してなかったなんて言わせないからね。…それともしたく、ない?」

「……そういうわけじゃ、ない、けど…さ。」

たどたどしい返事。また目を逸らす。随分と誘い方が大胆になったね?そんなこと口にしたら殴られるだろうから言わないけど。

そして綺麗に敷かれた布団の上に優しく下ろす。ベッドじゃないしクリスマスだものね、あくまで優しく。…別に普段から優しくないわけじゃない…うん…。

「………これ解いて…くれないよね…。」

「あー僕包装は綺麗にとる派なんだよね。びりびりに破くのあんまり好きじゃないんだ。………だからさ…。」

 

ロゼの浴衣をゆっくりと、少しだけはだけさせて、ピアスの痕に口づけをしていく。首筋の上から、鎖骨の下まで。余すことはなく。唇を離してはまたつける度に、ロゼの体が一瞬跳ねるのが面白くて、ついつい往復してしまう。

「っ…………っは…………ねえ……も………良くない……?………他にも、して、よ………。」

「…他にも?………ああ。そういう…ことね…。」

頭を少し上げて、先ほどまで首を舐り回した口が向かうのは、その荒い息の出口。最初は、軽い口づけ程度。さっきと同じように、唇同士をつけては、離して。少しずつ舌を使っていく。先と先が、触れ合う程度。そうしてだんだんと目と目を合わせて、舌と舌を、絡め合わせる。舌がお互いの奥へ侵食していくにつれて、目を閉じていく。

キスって、こんなに甘く感じるものだったかな。思い返されるのは、今までの数え切れぬ交わりの記憶。煙草、お酒、毒や薬の甘い味…いろんな味がしていたけれど。そういうのとは、どこか違う。そもそも味ではなく、心から感じる何か。曖昧だけど、言語化は難しいけれど、尊くて、するりと手から抜け落ちてしまいそうな。

なぜか、安心してしまう。…うん。ずっと、このままでいたいな。

 

 

 

ひたすらに愛を確かめ合った。もう、離すことのないように。

 

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「んんっ、あっ、はぁっ、やぁっ、だっ、んぅ、んぁ、うぅ…!」

騎乗位の体制でただ突き上げる。自分の腰の動きと連動してロゼの体がのけぞり、髪の毛とともに揺れる。

「うっ、くっ、はぁ…!」

股間が熱くなり、感覚が消えていく前兆がする。そろそろ体力も限界か。

「はぁっ、あ、ごめ、ろ、ぜっ、もう、く、る…!」

「んっ、ん、すき、すきぃ…!」

ロゼの体が僕に覆いかぶさり、両手で頭を優しくつかまれ、キスをする。喘ぎと漏れ出す熱い息とをも絡め、包み込むように舌同士を合わせる。体同士が重なったところで、ロゼの腰を抑えていた腕をロゼの体を固定するように背中に回し、腰の突き上げの方向を少し調整する。ああ、いくらでも君を、気持ちよくさせてあげたい。

「あっ…!!くぅっ…!!!!」

そして、中で果てる。何回出したかは、もう覚えてない。数える気もなかった。ロゼも、いったかな。一緒にきててくれたら、嬉しいな。身体から一気に力が抜けていく。全て出し切った感じ。…こんな感じ、初めてだ。

「…大丈夫?…ロゼ?」

「ん…ちょっと…力抜けてて…大丈夫…。」

「そう…。よかった…。」

力なくロゼの頭を撫でる。

「…はあ。…せっかく温泉入ったのに汗かいちゃったねえ…。」

「………温泉、あるじゃん。」

そうしてロゼの視線の先を追えば、外。そこにはお湯があふれ続ける、大きなお椀型の湯舟。

「…入る?」

「はいる…。」

「…からだ動かないでしょ。持ち上げても?」

「ん。おねがい…。」

…この状態だと割と…きつい…。いつもならなんてことないのにな。我ながらどれだけしたんだよ。…ちょっと恥ずかしくなってきた…。片手で持ち上げながら、大きな戸を開けて、外に出る。

「足、ちゃんとしといてよ。」

「ん…。………きもちいいなあ………。」

「…おじゃまします。あ、意外とひろ…いや…狭かった…。お湯がどんどんあふれていく…。」

「ズリエル身体大きいから…。ちぢんで?」

「無茶言うなよ…。………あ。僕の上に乗ればいいじゃん。ほらおいで。」

「ええ…。なんかやだ…。きもちわる…。」

「えっそれはダメなの…?………もういいじゃん。えい。」

「ちょっと力入んないからってむりやり…。…もう…。」

「…ごめんね。完璧な二人っきりって、あんまりなかったから。ちょっとだけ、贅沢させて。」

「そんなこと言われたらさあ…。………これも、クリスマスプレゼントだから。いいよ。」

「…ありがとう。」

僕もクリスマスプレゼント、渡さないとな。

 

…君と同じ景色を見たい。君とずっと一緒にいたい。叶うのなら、どれだけでも望みたい。貪欲で、浅ましい心。それでも、君に思うこの心だけは、真実と。そう、信じる。

 

湯船から溢れ、滴り地面に落ちる湯の音。暗闇に浮かぶ数多の星と月をよそに、心の内を語り合い。儚く美しい、ようやく掴んだこの日常が、終わらぬことを祈って。

夜は、更けていく。