かきごおりのお庭。

企画の小説とか書いていきます.

【R18】夜が耽るまで。

【ガッツリ性描写あり。BL、ふたなり描写あり。閲覧の際にはご注意ください。】

【未来ifです。ある日の夜のこと。の続きとなります。】

 

 

ベッドの横に立つスタンドライトの紐を人差し指と中指で引っ掛けて下ろしながら、ベッドの背掛けに体をもたれかけて枕をクッションにして足をベッドに投げ出す。投げ出した足を少し曲げて自分の太腿をポンポンと両手で軽くはたいて、彼を見る。

「…なにそれ。来いってこと?」

「勿論。…来ないの?」

「え…いや……んん…………。」

少し迷う素振りをした後、不満そうな顔でゆっくり来るロゼ。何だかんだ来るのね。僕の足で囲んだ空間に同じく足を放り出して、僕の胸に背を向けて寄りかかる。ふわりと彼の香りがした。柔らかな花の匂い。自然と体から余分な力が抜けていくような、そんな感じがした。

「…しないの?」

「いや?するけど。…ちょっとね。」

両手を彼の前に下ろして、頭を彼の左肩に預ける。

「…ごめんなさい。本当に。」

「…もういいって言ってんのにさ…。何回謝ってんの…。そんな引き摺る奴だっけー?」

「いや………切り替えうまい方だと僕も思ってたけど…。…まさか自分でもこんな事するって思ってなくて。…もうちょっと、このまんまでお願い。」

「………はあ。」

小さく溜息をつかれて、沈黙が続く。まだ頭の中はぐるぐるなんだ、許してほしい。

そうして一人終わらない自問自答を続ける中で、彼が口を開いて。

「……あの、さ。」

彼の左手が僕の左手にゆっくり覆い被さる。薬指にはめた指輪同士が小気味良い金属音を小さく鳴らす。

「…その、………俺もさ、ごめんって思ってるしさ。………と、ね。」

随分と間を持たせた喋り方。たどたどしいというか、ぎこちない。

「…?」

「………俺だけ、見ててくれてるって、安心、したから、さ。いいんだよ、本当に。…うん。」

僅かに彼の重ねられた手に力がこもって、手とシーツの間に指間をくぐらせて、手を握りしめられる。ひんやりとした手が、気持ちよくて。その歯切れの悪い告白は、僕のくだらない不安とか靄とかを、一瞬でかき消してしまって。時間がほんの少しだけ、止まったように感じた。

…なんて、卑怯なんだか。いつも言ってくれない癖に、こういう所で、そういう事を言う。本当にずるい。この男は、本当にもう。…君を好きになってよかった。許してくれて、ありがとう。精一杯、愛します。

「…馬鹿じゃないの。」

「え、なんで…。すごい恥ずかしかったのに…そういう事言うの…。」

「…そうじゃなくて。…いつも見てるに決まってる。あの日から、ずっと。」

そう言って、彼のうなじに口づけをする。ちょっと悔しいから、最初くらいはいじめたい。天邪鬼で悪いね。

「えっなんて…ちょっ、んんっ、くすぐった…。」

ピクリと身体を弾ませる彼のうなじから口を離したら、次は耳に。唇を耳朶に触れる程度に当てて、息を小さく吹きかける。

「っは、ぁっ、…ぅ…耳、は、だめ、だって…。」

「…そう?本当…?」

ベロの先を出して、耳朶の輪郭をなぞる。楕円状に、徐々に内側に、ゆっくりと運んでいく。やりきれない吐息を漏らす彼の反応を楽しみながら、耳輪の裏までも舐めとる。吐息が当たるようにしながら、じわりじわりと舌先を進める。

並行で両腕を伸ばす。握りしめられていた左手は彼の下腹部へ、空いていた右手は彼の脇を通って肌着の下へ。意図に気付いた彼がそれぞれの手を力なく掴むけれど、知ったこっちゃない。腕を伸ばす関係で彼を後ろからより近く抱き締めるような体勢になって、彼の香りがより強まって。少し、昂る。右手の指先で腹部をつつりと撫でながら上へ上へと手を忍ばせる。小さな突起が人差し指に当たったのを感じて、押したり、触れるか触れないかの所で摩ったり。彼の吐息がまた荒くなって、喘ぎが聞こえ始める。そして下腹部を通り過ぎた左手は慣れた手つきでズボンのボタンを外し、チャックを下ろす。膨らんだ下着の下のモノを布の上から掌を使って撫で回しながら言う。

「っ……ねえロゼ?悪いんだけど片手じゃ出せないからさ、自分で出してくれる…?」

「はっ、ぁ…っ…いじ、わるいぃっ…!」

一瞬耳から離した口をまた近づける。さっきよりも近く、より耳の穴に近くに舌をやる。

震える彼の手で出されたモノは既に怒張しきっていて。透明な液が先からはみ出しているのが見えた。左手全体を筒のように見立ててソレを上下にさする。最初はゆっくりと、筋に触らないようにしながら。しゃぶりつくしてやるのも良かったがなかなかどうして、この体勢が気に入ってしまって。口で耳を舐り倒し、右手でその大きくし始めた乳頭を弄り回し、左手で竿を撫で回す。喘ぎは控えめでも息は大きく、間隔が小さくなっていく。彼が果てるまであとどれくらいだろうか。もう少しか。左手でモノを握り、筋を摩るようにして上下移動を激しくする。舌の動きも、より大きく。彼が強張り始めるのが密着した身体越しに伝わる。

「ずり、える…っ、も、っ、おれ、むりぃっ…!!」

「いいよ…好きな時に出せばいい…。」

たどたどしく伝える彼の耳から舌を離して、小声で囁く。そして左手の動きをまた早くする。まだ。まだか。さあ。早く。いってしまえ。さあ。ほら。

「うっ、あぁっ、くっ、ぅ、ぅぅぅううう………!!」

亀頭の先から白く粘っこい液体が噴き出す。行先は様々。シーツに飛び散ったり、彼の服だったり、僕の手であったり。彼の腰がぶるぶると痙攣する。身体をくの字に曲げて、快楽の余韻に堪えている。

「あっ…はっ…はぁっ…はぁぁっ…。」

「…やけに多い…。まだ出る…?」

僕が手を離したあとも、勢いこそないものの先から白濁が滲み出していた。指に絡んだその液体を自分の舌に落として、自重で喉に垂れてくるのを待って、飲み込む。ねばねばと絡んで、息がしにくい。手の水かきに残った分まで舌でほじくり返す。味は苦くもあったが、何となく、手放し難い味がして。病みつきになるとはこういう事なのか。そんな事を考えて、舐めとった舌の先と手の間で細い糸がひかれて、煌めく。また、気分が高揚する。

「…もう、おわ、り…?」

僕の体に力尽きたかのようにもたれかかる彼が、首だけ動かし顔を半分だけのぞかせて、色っぽく髪を垂らし、目をわずかに閉じて、上目遣いで問いてくる。

「…どうしたい?」

「……また言わせるつもり……さっきから本当意地悪……。」

わざとらしく聞き返せば、概ね予想通りの返事が返ってくる。最初からどうしようかなんて決まっていたけれど。

「…そういう事ね。っ…よいしょ。」

被さっていた彼の二の腕を掴んで持ち上げて、僕の上に持っていく。膝の上に座らせておけばやりやすい。

「あっ………ちょっとまって…………。」

「えっ、何。したくなくなったの?」

「いやそういう訳じゃ………ないけど……………。」

「……言わなくていいよ、多分分かった…。」

もじもじとする彼を見て何となく察する。…顔が見えた方が好きとか、そういう事。きっと。何とも彼らしくて、つい頬が緩む。

「じゃあ改めて。失礼…?」

膝に抱えた彼ごと姿勢を入れ替えて。押し倒したような格好になる。左足を彼の股の間に割り入れる。…敢えて何もしないで、じっと目を合わせてみる。…ああ。三十秒くらいで目を逸らされてしまった。代わりにキスをした。キッチンでされたのと同じ様な、優しく食むようなキス。少しずつ、奥へと。咥えたり、舐めたりして味わい尽くして、舌の先で彼の唇の間を割って中へと入れる。

彼の右手を握る左手の他に、右手が空いていたからついでに耳を軽く愛でる。親指と人差し指で、挟んで、撫でたり、摘んだり。そして口の方は舌を絡めさせて、唾液を混ぜ合わせて。わざといやらしく舌を絡めとって、音を立てる。一度口を離すと、舌の先同士から垂れる糸が僅かに輝いて、ぷつりと途切れる。息を整えあって、また口の距離を縮める。吐息を交換し合いながら、蕩けるようなキスをする。…甘い、甘い、砂糖が舌と舌とで溶かされていくようで。気持ちがよかった。

口付けをやめて、口と右手をそれぞれ下へ持っていく。首元の十字を舌でなぞり、弱めに吸って。右手は彼の陰茎のその下、少しばかり濡れた花弁に指を当てる。体と吐息が震える彼をよそに、愛撫をし始める。中指で入口を撫でて、先の端だけを侵入させる。予想よりも解れていたから、さらに奥まで押し入れた。彼の吐息が声混じりに荒くなっていく。薬指も少しずつ、ゆっくりと後を追わせる。二本の指で、中を弄くり回す。入れたり出したりを繰り返す。音が高くなる度に、動きをより激しく、大きくする。彼の腰から体が震えだしたのを確認して、動きを止めて指を抜く。

「はぁっ………はっ……なん、で……?」

「…すぐ分かる。」

ズボンのチャックを下ろして、下着からモノを取り出す。大分きつかった。手で抑えながら亀頭をその口にあてがう。

「あ……ちょっ……ちょっとまっ…て……。」

「…もう無理。ごめん。」

接合部をまじまじと見ながら、先から緩やかに挿入する。滑らかに進ませ、根元まで余すことなく中へ捻り込む。

「あっ、くっ、うぅっ……!おお、き…!」

「はっ………はぁぁっ………。」

思わず僕まで息が漏れる。体に汗が垂れていく。快楽の奔流が押し寄せて、考える事は無用と頭が思い込む。でも。僕の左手を握る彼の右手を見て。彼の潤む瞳を見て。真っ直ぐに僕を見て小さく、好き、だなんて呟いた彼を見て。愛してあげたいって考えに上書きされて。そうして身体を彼に覆い被せる。身体同士を密着させてしまって、もう離れられない。

「…僕も好き。ロゼの事が好き。ずっと愛してる、愛してる。」

目を合わせて言った。確かに言葉に出した。彼が小さく頷いてくれたのが見えた。ありがとう。

そして、腰を動かし始める。彼の吐息が感じられるほど、顔が近い。臀部を腰で叩く間隔が早くなっていく程に、喘ぎは嬌声に変わっていく。息はより熱く、声はより高く。その全てすら、愛しく思えて。無意識の内に、また、好きって囁いていた。夢中で突くうちに、やがて腰に熱がたまるのを感じる。思ったより、ずっと早い。

「はっ、あっ、ロ、ゼ、もう、出そう…!」

「んっ、な、かで、いい、いい、っ、からぁ…!」

その言葉で、また運動が早まる。肌と肌がぶつかる音と、挿入の音が重なってまた艶めかしく聞こえる。

「はっ、ぐっ、いっ……くっ……!!」

下半身の熱が限界を迎えて、中で果てる。快楽と動悸が胸を突き上げる。両手で彼の身体を抱きしめて、挿れたまま射精を続ける。腰が震えて、支えるのもきつい。

「っはぁっ、はっ、はぁーっ、……っ…。」

「ぁ、あっ、つ、い………。」

漸く出し終えて、力が抜ける。腰が抜けてしまいそうで、気持ちが良いのも考えものだ。

「…あ、れ?…イってない、の?」

「ざん、ねん、だねー…。」

「…息も絶え絶えのくせして、よく言う…。」

「ふ、ふふ。………ね。」

「……なに?」

「…もうすこし、しよ。」

「………勿論。まだ終わる訳、ないじゃん。」

そう言って、また腰を持ち上げる。軽く口付けをして、手を握り締める。

幸い、明日は休日で、夜は長い。朝日が昇るまで、疲れ動けなくなるまで、体力の続く限り、満足するまで愛し合おう。…嗚呼、幸せだ。