後始末。
「……馬鹿な事を。」
目の前の醜悪な怪物に、毒を吐く。
うぞうぞと不愉快な動きを繰り返す、異形の肉塊。存在そのものが気象悪いと感じるほど、それは非現実的なもので。
そこに重ねて苛立つのは、その怪物に目の前で部下が囚われたからで。しかもあろうことか、自分がかばわれた形で。
部下の名はプートリド・ベンチュラ。静かに気高く佇むその姿は絵画といわれても違和感は無く。時折カスタードをまんま差し入れてくる不思議な彼女ではあったが、実に出来た部下であって。
その彼女に突き飛ばされ。
その彼女は自分の代わりとでも言うように取り込まれ。
その彼女はどうしてそんな顔をするのかというような顔で。
『たい、ちょう。』
贅肉に埋もれ、消えていった。
こちらの気も、知らないで。
「やってくれたな、愚昧が。」
心の底から、形容しがたきどす黒いものが、湧き上がる感覚がして。
「下らん事に身体を張りおって。」
届ける者も消えた、独り言をつらつらと。
「お前の自負はその程度だったのだな。」
周囲の光源が明滅を繰り返す。
「…。」
明滅を繰り返す。
「嘗め腐りおって…。」
次第に乱れていく光はやがて爆ぜて、周囲一帯が暗く覆われる。そして爆ぜた光の粒子は、憤怒の下へ集う。その輝きは黒山羊と、怪物を照らす。断頭台は整った。
怒りを燃やすように。
猛りを焦がすように。
己の不甲斐なさを呪え。
汝が罪を雪げ。
"まだ"彼女の物の帽子を拾い被り、呟く。
「ここで死ぬ事は許さん。」
『祈れ、極光の前に。必ず、取り戻す。』
赤い赤い山羊の目が、鈍く、色濃く輝いた。
お名前だけですが、
やえこさん宅のプートリド・ベンチュラさんをお借りしました。
ありがとうございました。