【R18】暗澹
※ifです。
「なに、なん、でこんな、やだ、いや……!」
先生は出張でいなくて、自主練で。友達の子は先に帰ってしまって。せっかく静かだったから、部活の時間が終わったあとも、しばらく残って練習をしていて。いい加減にもう帰ろうと、着替えをしに物陰へ行った。
そんな折に、不意に誰かに連れ込まれた薄暗い室内。思い出したくない。誰かの手が怖い。知らないあの人の手も、知ってるあの子の手もあった。室内灯が逆光を生み出して、顔はよく分からなかった。
脚を抑えられて、逃げられない。手を掴まれて、抵抗も出来ない。視界は被せられた何かで奪われて。震えて声も出ない口に突っ込まれた布から、血の味がした。
縛り付けられた壁は硬くて冷たくて。押し倒された床はひどく生温かった。汗の染み込んだ床が、気持ち悪くて、きもちわるくて。
「ん、んんっ、ん゛……!」
首筋を舐められて、汗で張り付く布を掻き分けられて。いやだ、いやだ、いやだ。頭の中は不快感でおかしくなりそうで。何が起こるか分かる自分すら嫌だった。
首筋に当たっていた舌は胸の肉豆を弄んで。つぶしたり、口の中で転がしたり、ぴぴぴと細かく弾いたり。気持ち悪い。身体が仰け反る。嫌いだ、きらい。
手には肉棒を握らされ。熱と肉欲を感じさせる手触りに反吐が出そうだった。擦らされる度にその熱は高まって、そして理性とともに吐き出される。指や腕に絡みつくそれを、指ごと舐られる。関節も、指の間の水かきも、爪の間も。
やがて涙が出てきた。情けなさすら不快感の底に埋まる。泣いたら向こうを楽しませるだけって分かっている。反応を示すのは苛めへの最高のスパイス。でも、でも。僕は、強くなくて。化けの皮が、剥がれつつある。
嗚咽を漏らしたのを勘づいたのか、視界の闇が取り払われた。最低の光景を見る羽目になった。自分を取り囲む奴らは皆笑っている。下劣を顔に浮かべて愉しんでいる。
一番驚いたのは。それを見て、最早憎しみすら感じずに。ただ怯えを感じる自分で。
「ん゛っ……、っふ、ぇほっ、ふ、ぅ…!」
喉からの反応を抑え込んでいた巻かれた布も引き抜かれ。その勢いのままに思わず咳き込み、代わりの栓かのように、舌を捩じ込まれる。唾液が絡む。臭くて、気持ち悪くて。顔が引き攣る。
「い……ぁ……!、ぅ、れぇ……、ゃ……!」
言葉は潰され、意思は折られ。死んでしまいたい。
口内を犯される内に、下半身に冷たい空気が触れる。袴を脱がされたことに気付く。覆い被さって接吻に入れ込んでいた輩が自分から離れ、軽い金属音が鳴る。それを皮切りにして、拘束は緩まれないまま周りからも金属音が鳴りだす。ベルトを外す音。チャックを下ろす音。
気づきたくなかった。その動作の意図。これから始まること。
お願い。やめて、おねがい。それだけはいやだ。おねがい、おねがいだから。やめて、やめて。
声は狂った彼らの熱気と、視線と、欲に殺される。意思も尊厳も、関係ない。僕はこれから、こいつらの道具になる。成り下がる。
脚を持ち上げられ、臀部を引き摺られる。しやすいように。
たすけて。
僕の、僕としての言葉は、これが最後になった。誰も、聞いちゃいなかったけど。
「い、だい……!や、だぁ、いやッ……!う、ぁ゛!」
何かが裂ける感覚がする。失っていく音が聞こえる。重なっていく身体をひたすらに拒む。力が入らない。嫌だ。痛い。嫌だ。嫌だ。
「やめ、て、い、ぅ……!」
肌が打ち付けられる。何度も、何度も。汗が飛んでくる。汚い。嫌い。いやだ。身体と心の軋む音を代弁するように、喉から声が押し出される。
けれどその声の出入口も塞がれる。怒張したソレの先を口にあてがわれ、閉じた口を無理やり割って入り込む。顎を掴まれて目一杯開かれ、しゃぶるように要求される。
「ん゛っ……ん、う゛……!」
咥えて間もなく喉に粘性の液体がへばりつく。息が苦しい。
ピストンの速度が上がっていく。もう抵抗するのも嫌になった。そう思って体勢を楽にしようとしたら、目線が合うように顔を持ち上げられた。気持ち悪い。
そして熱がぶちまけられる。中まで汚されて、ついに綺麗な場所は無くなった。引き抜かれて、身体が力なく崩れ落ちていく。喘息のような息が漏れる。
隣で自分のモノを扱いていた男が待ちきれないかのように、絶え間なく僕を貫いてきて。またサイクルが始まる。
全員一回ずつで終わってくれないかな。もう感覚もない腰を持ち上げられながらそう思う。
もう何も見たくない。感じたくない。
そう思って、意識を消した。
もう何も、覚えていない。