かきごおりのお庭。

企画の小説とか書いていきます.

帰って、それから。

記憶が戻った、あとの事。未来if。

 

「………ズリエルの家って、こんな殺風景だっけ?」

「ああ…。エドマンド君とか、出てっちゃったからね。彼らの私物は彼らが持ってって、それでこの有様。意外と僕のものって少ないんだなって思ったよ。」

本棚の余ったスペースに無数に置かれていたバイクの模型は今では彼が餞別にと残していった1つのみ。よく二人で乗ったね。懐かしい。

壁にかけられていたTシャツも一つだけ残っている。天照語で大きく友情の文字が書かれている。意味をわかって置いていってくれたならとても嬉しいが、はたして。

「…なんか、つまんなくない?買いに行こうよ。」

「今かい。急だな。……まあいつかは買いに行くしいいけど……。何でお前がそんなこと言うのさ?」

「え?だって……住むんじゃないの?」

「…あれ。僕それもう言ったっけ……?」

「……………え、えっ……………。」

しばしの間隔を持って紅潮していくロゼの顔。あーーーこれもう先読めたぞ。本当にさーーーー。

 

 

「…………行こ。」

そう言って振り返り戸へ向かうロゼ。あれ。叩いてくるかと思ったんだけどな。………そんなに子供じゃないか。ちょっと反省。

「…………ん。分かった。」

そうしてロゼの後ろをついて行こうとした瞬間。再びロゼがこちらに顔を向ける。

「ごめん血吸うの忘れてた。実は結構やばい。」

「えっ。待って。こっちにも心の準備があ…!!」

押し倒される。頭ぶつけたらどうするんだ。いや今考えることはそんなんじゃなくて―――

「いただきまーす。」

「ばっ…………!!!…………っはぁっ、くぅっ………!!」

気を張ろうにも遅すぎた。少しの痛みを越え、快楽の奔流は首元から頭へ突き抜けていく。思いに反する身体の愉楽が溜息とともに吐かれる。血液の抜かれていく感触が心地良い。全身がうぶ毛立つ。くそ。抗うだけ、無駄だ………。

 

 

 

事が済んだあと、めちゃくちゃ怒った。突然果てるかの寸前まで苛め抜かれる身にもなれ。全くさあ。…相当緩んだ顔してただろうな。もう。…終わった後、またされたいとか、一瞬たりとも思ってない。自分の中で、そういうことにしておいた。

 

 

 

「あー……ストリートにつきましたけどぉー。どこ回りますかねロゼールさーん。勝手に一人で回ってきてもいいんですよ?僕はコーヒー飲んでるのでー。取られた血液の代わりにねー。」

「う………いい加減その話し方やめてくんない……?悪かったって言ってるじゃん…。」

仕返しとばかりにストリートにつくまでずーっとネチネチ言ってた。もう流石にいいか。これ以上続けるとロゼが拗ねそうだ。ちょっと罪悪感も沸いてきた。

「…悪かった。僕も大人げなかった、謝る。」

「…ん。…いいよ。俺が最初にやらかしたから。俺も、ごめん。」

…すぐに許してもらえるものなんだ。正直って、難しいな。…まあ、まだ記憶分の仕返しは終わってないけどね。言わないけど。そこら辺はきっちり返してもらうからね。仕返しの仕方、いくらでもあるんだよ?

 

 

「これ!この置物かわいい!買おう!ね!」

「いいけど…そんな軽率に買って大丈夫…?お金はあるけど置く場所限られてるからね…?」

「大丈夫!いざとなったら屋敷に持ってくから!あっ待って……この赤いやついいな…どっちがいい……?」

「持ってくの?目的見失ってない?…え………うーん…赤いやつの方が装飾綺麗な気がする。赤いやつの方がいい。」

「俺もそう思う。これにしよう。」

「……折角だし2つ買おう。この緑のやつ。」

「え。ズリエルが言いだすの珍しいね。どうしたの。」

「そうだねーいつもお前が勝手に買うからねー。…僕だって物欲くらいあったっていいだろ。まあ、気にしないで。」

「…ふーん?まあいいけど。貸して。会計持ってく。」

「はい。どうぞ。……。」

…ふたりだから、色がちがう、ふたつがほしい。言えるわけないじゃん?正直は、難しいんだ、やっぱりね。

 

 

 

そのまま、順調に買い物を続けていた。壁にかける時計とか、棚に置く小物類とか。なんでか服も買った。ロゼの選んだやつだし間違いはないだろうから別にいいけど。………そこで、思いもよらない1つの問題にぶち当たる。

 

「あ、あーーーーー…………………。」

「…どう、しよっか………。」

 

ベ  ッ  ド。

そうか。そう来たか。実は今の僕の家にはベッドが一つしかない。他に住んでいた二人とも自分のを買っていたからね。そりゃあ持っていくさ。………で、何が問題かって。

 

二人用のサイズのベッドを買うか、否か。入るなり店員さんに絡まれて。目的を聞かれ。そして着いたのがベッドコーナー。まあ普通だ。でもいきなり二人用のベッドを突きつけられる。いや、馬鹿らしいと思うよ。こんなことで悩むのも。………どうしようかな。個人的には、買いたい、けど…。

ちらり、ロゼを横目で見る。…うわ。まっかっか。少年かよ。…なんて、僕も馬鹿にできないんだけど。何も言えなくなってるものな。あー。うーん。

「…ロゼ?大丈夫?」

「え。え、う、ん。」

「もう店員さんどっか行っちゃったから。そんな緊張しなくてもいいじゃない。」

「えー、と………。」

色んな想像が巡ってるのかな。もー。

「………はい!起きて!」

手を勢いよく握りながら、目の前に飛び出す。あ。顔近すぎたかな。目と目を合わせる。

「…!ちか、ちかい!!」

顔を背けられる。顔赤いまんまだけどまあいいか。

「でも落ち着いたんじゃない?どう?効いたでしょ。」

「…でもそのやり方はどうかと思う。」

「いつか泣き止ませるためにキスしたよりかはまだマシでしょ。」

また顔が赤くなった。忙しそうだなお前の顔は。

「あれはもうなんか違ったじゃん!確実に泣き止ませるためじゃなかったでしょ!!」

「さーてね。どうだったかな。まあいいでしょ。…で、ベッド。どうする?」

「………ズリエルは。どうしたいの。」

「あ、僕が先に言うの。…ちょっと恥ずかしいな。まあ、うん。一緒に寝たいなーとは、…思う、けど?」

「………そう。じゃあ、買おう?これ。」

「…え。いいの?」

「断る理由、ないじゃん。…恥ずかしいけど、いいよ。…ね。」

「あ。え。…はい。分かった…。はい。」

……ちょっと、いやだいぶ、意外だったなあ。恥ずかしいーって言って、嫌がられるかな、と思ったけど。…うわあ。ちょっと、ニヤけそうだな。少し微笑んでのあの台詞は…。うわうわ。やばやばやば。

「…ちょっと、店員さん呼んでくるから。ロゼ待ってて。」

「あ、うん。分かった。」

口を見せないようにしながら、店員を呼びに行った。ああもう。ちょっと、いきなりアレは卑怯じゃない?はあ…………。心臓に悪い。これからこんなの増えるの?やばいね。生き返ったけど、また死ぬんじゃないか…。…あ。店員さんいた。

 

………………………

 

 

 

「あー。つかーれたー。なんかたべたい。」

「そうだねえ…。なんか家にあったかなあ…。結構自堕落な生活してたから何もないだろうなあ…。ついでに買ってこうかな。なんか食べたいものある?家で作るから言って。なんなら先に帰ってても大丈夫。」

「あー、食べたい、もの……。んー…いや、いいや、俺も付いてく。シャンプーとかも買いたいから。」

「ああそうね…。僕そこら辺わかんないからなあ。僕のも選んどいてよ。」

「えー。ズリエルの好みのやつわか………るけど………。いやもう先にこっち付いてきてよ。そっちのが早く終わるよ多分。」

「適当でいいんだけどなあ。それで早く終わるならそれでいいか。じゃあ付いてく。行こいこ。」

「ん。」

何食べたいか、結局聞いてないけど。まあ買う時でいいか。お酒も買っとこうかなー。…ワイン…どの銘柄が好きなんだっけ…?これも後で聞いておこう…。

 

 

…たのしいなあ。ふふふ。幸せってやつだな。ちょっと実感早いかもだけど。今日はちょっと、張り切って料理作りましょうかね。

「ロゼ。食べたいもの決まったら早めに言ってよ。ちょーっとばかし凝るから。」

「え。まじ?…………生肉………?」

「調理もクソもないねえそれ。……そうでもないかな?まあ頑張るかあ。お楽しみに。」

「まあ期待しないで待ってる。」

「ええ。ひどくない?」

「だってさー。…ねえ?」

「えー……そんなこと言うならさー………」

 

 

 

………………………

 

 

 

つづきます。