かきごおりのお庭。

企画の小説とか書いていきます.

たった一つの繋がり。

倒れ行く西京タワー。いくら巻き添えとはいえ、色とりどりに輝く魔法や確実に殺意を込めた体術を受けて、ましてやそれも財団の本気を受けて、耐えられるものなんかこの世に存在しないだろう。僕自身は後方にいて、飛んでくる瓦礫から支援勢を守ったり、隙あらば濁流を化け物に叩き付けたりしていた。勿論、前線の人たちを巻き込まないように。最初こそ誰かさんの火を消してしまったりしたけど。謝らなかったよ。そんな暇ないよ。あと見覚えある誰かが吹っ飛んでたのはもう気にしないことにした。本人楽しそうだったし。星にならなくて良かったねと思うばかり。

 

…直に、夜明けはやってくる。…折角生き返ったし、ちょっと野暮用を済まそうか。

 

瓦礫を避け、砂利のようになった地を踏み分けて進む。髪留めがいつの間にか割れ、だらだらと伸びた髪の毛を揺らし歩き、目指すは、かつての恋人。

 

「……ロゼールさん、でしたか。…もし良かったら、髪留めとか、簪とか、ありませんか。貴方なら、何か持ってるかなあと思ったんですけど。自分のもの、壊れてしまって。」

我ながらぎこちない。こんなに演技下手だったかな。

「え、あ、あー…今、今…?…俺が使ってるので良ければ、ある、けど…。」

「…それで、いいので。良ければ、貸してください。」

「ん、じゃあ…はい。」

そうして渡されたのは、見覚えのあるかんざし。桜の花の装飾が、目立ち過ぎない金色に縁どられている。…つけて、くれたんだね。あんまり、見れてはいなかったけど。

「…ありがとう、ございます。…いつか、返しに行きますね。どれだけ、時間がかかっても。うん。絶対に。約束、です。後で恥ずかしくなっても泣いても、知りませんよ。…僕が返しに行くまで、待っててください。…じゃあ、また、いつか。どこかで。」

 

温泉で教えられたように髪の毛を巻いて、かんざしを刺して、後にする。…ほのかに、彼の香りがして。目を閉じれば、すぐそこにいるような気がして。今はこれだけが、僕と君を繋ぐ、たった一つの物。…クリスマスまで、お預けだな。返すのは。

 

 

…例え、どれだけ時間がかかろうと。君の中の僕を取り戻させてやろう。…絶対に。