また、いつか。
タワーの崩れた後。まだ、やりたいことはあって。あの、例のクソお喋り野郎。…なんて、もう言えないな。あんなもの見せられてしまっては。僕はあんたの事、どうもまだ何も知らなかったらしい。まさか飲みたいものを聞いてミロが返ってくるとか、そういう事ではなく。いや意外だったけどね。マジで言ってんのかお前とか思ったけど。
…そういう、事ではない。あんたが何をしたのかとか、何を考えてたとか、そういうのはまあどうでもいい。気になる気持ちはあるにはあるけど、別に聞こうなんて思わない。詮索は、しない。あんたが話したくなったら話せばいいさ。
…ただ、あんたと駄弁りたいだけなんだよ。今じゃなくてもいいとも思うけどね。…まあその、そういう気分なんだ。あんたならきっと、わかるだろう。話したい事たくさんあるんだってば。少しくらい僕の暇つぶし相手になってくれたっていいだろ。
なんて思いで探しつつも、見当たらない。…やっぱりもうどっか行っちゃったかな。突拍子もなく現れて、気を抜けばすぐ消える。全くその癖、治らないかな。…治らないよな。それが、あんたっていう人、なんだもんな。…それでいいさ。僕とは全くスケールの違う人だったみたいだし。それで済ませるのはちょっと寂しいかもなんて思うけど、僕ごときが分かろうとするのも、なんだかな。ちょっと躊躇いがある。…まあ。あんたがそれでも良かったら、いつでもちょっかいをかけに来てくれればいいさ。そんな感じ。
…この西京にいた誰もが、あんたを否定できない。誰にもあんたを否定させやしない。少なくともここにいた46人は、あんたの証人だから。味方、敵とかそんなつまらない括りはいらない。皆あんたを誇りに思う。…敬いはちょっとわかんないけど。今更疑いもしない。
…あのタワーに立った時だけかもしれないが、それでもあんたは確かに、”大魔術師マグパイ”だったよ。
頭をやるせなくかきながら、なんとなく日の差し掛かった空を見上げる。
………まあ、欲を言えば。あんたに一回くらい、「よくやった」なんて、言ってほしかったかも、なんて。
あの夢の溢れた路地裏を、僕は今でもたまに思い出す。あんたがいないかななんて、探したことも、ちょっとだけある。…ちょっとだけさ、いや、本当に。
…あんたに会えて、本当に良かった。あんたの魔法を見れて、良かった。
じゃあね。また会う、その日まで。世界一の大魔術師。…僕の、秘かに憧れた、夢の魔法使い。…きっとどっかでまた会えるだろ。それもとんでもなくどうでもいい時に。その時にはまた、バカみたいな話をしてくれ。とびっきりのミロを、振る舞ってやるから。